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第2章 遮断器
2.4 解説
2.4.1 用語

 (1) 定格遮断電流:Rated Breaking Current
    規定条件の下で十分に遮断できる電流の限度をいい、交流の場合は推定短絡電流の短絡発生後1/2サイクルにおける対称実効値で表し、
   直流の場合は推定短絡電流の最大値で表す。
 (2) 定格投入電流:Rated Making Current
    規定条件の下で満足に投入できる電流の限度をいい、交流の場合は最大推定短絡電流波高値 (非対称最大波高値)で表し、直流の場合は
   定格遮断電流に等しい値で表す。
 (3) 対称実効値:Sym. rms
    短絡発生後1/2サイクルの点における直流分を含まない交流分のみの実効値
 (4) 非対称実効値:Asym. rms
    短絡発生後1/2サイクルの点における直流分を含んだ全電流の実効値
2.4.2 保護方式
 (1) 保護方式の分類
  遮断器は、その設置点を通過する短絡電流を単一の保護器で遮断することが原則である。
 これを全定格保護方式と称する。単一の保護器では、遮断容量が不足する場合、その上位側に設置される遮断器を協同して短絡遮断する方式を
  後備保護方式と称し経済的な遮断器の適用手法として普及している。
  一方、給電の持続という信頼性の点からは、配電系統の末端の短絡では、その事故点の直近上位の遮断器だけで遮断し、これより上位側の遮
 断器は動作しないよう遮断器間の協調をもたせた方式を選択遮断方式と称し、通常の全定格保護方式と区別している。
  (a) 全定格保護方式
     全定格保護方式は、すべての保護装置(遮断器)において、それぞれの設置点での最大推定短絡電流以上の定格遮断電流を備えたもので構成
    された保護方式で、選択保護方式と非選択保護方式とがある。
  (b) 後備保護方式
     後備保護方式とは、系統中に設置された保護装置が、その設置点での最大推定短絡電流に対して定格遮断電流が不足する場合、その保護装
    置の電源側(上位)にこの最大推定短絡電流に対して十分な定格遮断電流をもつ保護装置を設け、この保護装置の助けを借りて安全に故障回路
    を遮断する方式のことで、バックアップ保護方式または、カスケード保護方式ともいう。
     この方式の場合は、上位遮断器より下位の系統全てが停電となることに注意が必要であり、原則としては、非重要負荷回路のみに適用できる方
    式である。
   
   <後備保護方式の組合せ例(寺崎電気産業(株))>
    例えば、最大推定短絡電流が25kAの回路において、E250-SF単体の設置では定格遮断電流が15kAと不足しているため安全に保護できないが、
    その上位遮断器に十分な定格遮断電流をもつS400-GFを設置することで、その回路に短絡電流が流れたときに、上位のS400-GFと下位のE250-SF
    が同時に遮断することにより、短絡電流30kAまでの保護が可能となる。
Back UP
Circuit
Breaker
S400-GF  
Branch
Circuit
Breaker
Rated
Breaking
Current
(kA)
65  
 
E250-SF 15 30  
 
  (c) 選択保護方式
     選択保護方式とは、系統の電気機器または電路の異常あるいは故障によってその回路に過負荷や短絡電流が流れたとき、故障回路に直接関係の
    ある回路だけを系統から切離すために故障点に最も近い保護装置のみが動作し、故障以外の他の健全な回路への給電が停止されないように保護装置
    相互間で協調のとれた保護方式のことをいう。
   <選択保護方式の組合せ例(寺崎電気産業(株))>
    例えば、最大推定短絡電流が30kAの回路において、下位遮断器にS100-GF、上位遮断器にS630-NEHを設置することで、下位遮断器の負荷側で短絡
   事故が発生し短絡電流が流れた場合は、その事故点の直近上位のS100-GFのみが遮断し、
    その上位のS630-NEHは動作しないために、S630-NEHの下位に繋がる他の健全な回路へは給電の持続が可能となる。
  (d) 選択遮断保護選定表
     選択保護遮断組合せ表は、船級協会の承認を取得したものではなく、遮断器メーカの保証値である。
     なお、図2.4.1に例として選択保護遮断の適用例を示し、表2.4.1に船級協会別の給電保護方式を記載する。
UP
Stream
Breaker
S630-NEH  
Down
Stream
Breaker
Rated
Breaking
Current
(kA)
50  
 
S100-GF 50 45  
図2.4.1 選択保護遮断の適用例
表2.4.1 船級協会別の給電保護方式
給電組合せ 船級協会(2008年度版)
NK ABS LR DNV
@-{BCDE} 選択遮断 選択遮断 選択遮断 選択遮断
A-F 選択遮断 選択遮断 選択遮断 選択遮断
B-F 後備遮断 選択遮断 選択遮断 選択遮断
C-G、D-H 後備遮断*1 後備遮断*1 後備遮断*1 選択遮断
E-I 選択遮断 選択遮断 選択遮断 選択遮断
備考1.給電組合せ「B−F」については、適用に当たり、船級協会と打ち合わせて実施すること。
   2. *1第一重要補機(Primary essential services)に後備遮断の適用はできない。
      第二重要補機(Secondary essential services)に後備遮断を適用する場合は、自動切り替えと警報機能を有する二重化装備とする。
2.4.3 直流12V,24V回路への遮断器適用の留意点
 主回路電圧が直流12V及び24Vの回路へ遮断器を適用する場合は、直流250Vなどの電圧のものと同様に、直流回路に対応した遮断器を適用しなけ
ればならない。
 特に直流12Vでは、全く使えないわけではないが電圧が低すぎるために、内部の接点に形成される酸化皮膜が破れ難い傾向にあり、開閉頻度が少な
いなどの使用状況によっては接点部の接触抵抗が増大し導通不良等の支障が出る可能性がある。 したがって、直流24V未満の回路に適用する遮断
器は、定期的に数回の開閉操作を行い、接点の接触抵抗の増大を未然に防止するなどの対応が必要である。