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第4章 電動機
 電動機の規格には、JIS C 4210:2001 一般用低圧三相かご形誘導電動機、JEM 1277:1998船用低圧三相誘導電動機があるが、
これらは標準的な規格であるため、実際に船舶において使用されている電動機の性能等はこれらの規格とは異なっている。
 より実用的な資料として、船舶用電動機のメーカーである大洋電機(株)(三相誘導電動機)と三菱電機(株)(単相誘導電動機)の電動機
の要目を以下に掲載する。
 電動機の要目はメーカーによって異なるので注意のこと。
 なお、JIS C 4210:2001 及び JEM 1277:1998については、「船舶電気装備工事ハンドブック(設計編)」を参照のこと。
4.1 三相交流電動機に関する用語
4.1.1 電気機器の絶縁の種類


 電動機を運転すると、内部損失による発熱のために温度が上昇し、数時間経過すると一定の温度に落ち着く。
電動機の温度と周囲の温度との差を温度上昇といい、この値が高くなりすぐると絶縁物の劣化をはやめたり、焼損したりする。そこで、
表4.1.1に示す絶縁種別ごとに、電動機各部の温度上昇限度が決められいる。
表4.1.1 耐熱クラス一覧表(JIS C 4003:2010)
実績熱的耐久性指数又は相対熱的耐久性指数
(℃)
耐熱クラス
(℃)
指定文字
(注1)
≧90 <105 90 Y
≧105 <120 105 A
≧120 <130 120 E
≧130 <155 130 B
≧155 <180 155 F
≧180 <200 180 H
≧200 <220 200 N
≧220 <250 220 R
≧250(注2) <275 250 -
備考1.必要がある場合,指定文字は、例えば、クラス180(H)のように括弧を付けて表示することができる。
     スペースが狭い銘板のような場合、個別製品規格には指定文字だけを用いてもよい。
   2.250を超える耐熱クラスは25ずつの区切りで増加し、それに応じて指定する。
4.1.2 外被構造による保護方式
 電動機を使用の際、設置環境、雰囲気に適した外被構造および保護構造を選定することは、電動機本来の本能を発揮するために重要である。
その選定が適切でない場合は、電動機の寿命を低下させるばかりでなく、事故の原因となるので、充分な注意が必要である。

表4.1.2 保護等級一覧表(JIS C 4034-5 1999)
          水の侵入に対する保護方式





人体および固体異物に関する保護形式
第2形式名 無保護形 防滴形 防雨形 防まつ形 防噴流形 防波浪形 防浸形 水中形
第2数字記号 0 2 3 4 5 6 7 8
説明 水の浸入に対し特別の保護を施していない構造 鉛直から15°の方向に落下する水滴によって有害な影響を受けない構造 鉛直から60°の方向に落下する水滴によって有害な影響を受けない構造 いかなる方向からの水滴であっても有害な影響を受けない構造 いかなる方向からの噴流であっても有害な影響を受けない構造 いかなる方向からの強い噴流であっても有害な影響を受けない構造 指定の水深および時間で水中に浸し、たとえ水が浸入しても有害な影響を受けない構造 水中で正常に運転できる構造
第一形式名 第1数字記号 説明
無保護形 0 人体の接触、人体異物の侵入に対して、特別の保護を施してない構造 IP00 × × × ×
半保護形 1 人体の大きい部分、例えば、手が誤って機内の回転部分または導電部分に触れないようにした構造。直径50mmを超える固形異物が侵入しないようにした構造 IP10 IP21 × × ×
保護形 2 指などが機内の回転部分または導電部分に触れないようにした構造。直径12mmを超える固形異物が侵入しないようにした構造。 IP20 IP22 IP23 IP24 × × ×
全開形 4 工具・電線など最小幅または最小厚みが、1mmより大きいものが、機内の回転部分または導電部分に触れないようにした構造。直径1mmを超える固形異物が侵入しないようにした構造。ただし、排水穴および外扇の吸気口、排気口、は記号2の構造でよい。 × IP44
防じん形 5 いかなる物体も、機内の回転部分または導電部分に触れないようにした構造。じんあいの侵入を極力防止し、たとえ侵入しても正常な運転に支障がないようにした構造。 × JP54 IP55 IP56
備考1.各形式の試験は、無保護形は無試験、他は別の規定により試験を行う。
   2.IP記号は通常用いられる保護方式、×印は組み合わせの難しいものである。
4.1.3 始動電流と突入電流について
  電動機始動時の始動電流は、定格電流の5〜8倍という非常に大きな電流となる。(全電圧始動の場合)
  この時の力率は約0.3という非常に低い値であるため、電源系統の電圧変動の要因となる。また、その影響は大きくなるため注意する必要がある。
  突入電流とは始動した瞬間に流れる電流のことであり、始動後すぐに始動電流に落ち着く。突入電流は電動機の起動時だけでなく、スターデルタ切
替時や瞬時再起動時にも発生する。
 なお、突入電流により遮断器を瞬時動作させることがあるため、突入電流を考慮した遮断器の選定が必要である。
 (一般的には、突入電流=始動電流×1.7程度)
4.1.4 保護協調について
  保護装置相互間の協調については、次の諸点に考慮を払わなければならない。
  ・ 電動機の始動電流又は回路の過度投入電流によって開極しないこと。
  ・ 保護装置の電流対時間特性と保護されるケーブル又は絶縁電線の耐熱特性は協調がとれていること。
図4.1.1 電流−時間特性曲線
 選択遮断方式では図4.1.1に示すA、B、Cのように電源側に近い方の遮断器の電流対時間特性は、必ず給電回路の負荷側にある
 過電流継電器より短限時領域(又は短絡電流領域)側、即ち図において右側にあり、その特性曲線は交わってはならない。
 図においてEとA、B、Cは時間的に協調がとれているが、E'とA、Bとは協調がとれていない。